ホールインワンという事故
ホールインワン保険というのもあるくらいですから。
ゴルフをやらない人でもホールインワンという言葉は知ってると思うのですが、いわゆる第1打を打ったらそのままカップに入っちゃうあれです。
その日、午後からの2ホール目、177ヤードのショートホール。最近中古クラブ屋で買った9番ウッドで打ったボールは、珍しくピンに向かってまっすぐ飛んで行きました。正しくは、少し左方向に打ち出したのですが、その時、左からのアゲンストの風がけっこう強く吹いていて、結果的にピンのすぐ横に落ちたのです。2バウンドほどしたでしょうか、次の瞬間、そこにいた5人は全員飛び跳ねていました。
何が起こったのか。そうなんです。ボールが162m先の直径10.8cmの穴に入ってしまったのです。テレビでは見たことがあります。でもナマで見たのは初めてでした。
本当に珍しいことが起きたのですが、その事が私に起きてしまったということは、大変な確率の出来事といわざるを得ません。
私が、技術的にどの程度のゴルファーかという話からせねばなりません。
たとえば、昨年の一年間で、私は14ラウンドゴルフをプレーしておりますが、平均ストロークは106.9打、平均パット数は37.1打、ショートホールは平均4.48打たたいています。
数えてみましたら、56回ショートホールに挑んだうち、1オンしたのは10回だけでした。
つまり、この人の場合、1ラウンドするうちに、ショートホールで1オンする確率は、せいぜい1回にも満たないということです。この人が今年6度目のラウンドでやってしまったわけです。
数字的な確率に、技術的な可能性を加味すると、けっこう大変なことだとよくわかります。
たとえて言うと、街を歩いていて、たまたま気が向いて、サマージャンボを1組買ったら、当たってしまったみたいな。
お話はこれで終わりではありません。しばらくの大騒ぎのあと、グリーンに行ってカップに入ったボールを確認すると、私の尊敬する大先輩でシングルプレイヤーの亀田さんが、
「キャディさんに御礼をして、ゴルフ場から証明書をもらわなきゃね。」
と、静かにおっしゃいました。
「あっ、そうなんですか。」
また、
「それと、向井君はホールインワン保険には入ってるの?」
と、にこやかにお尋ねになりました。
「あっ、どうだっけ。あれ、どうだっけ。」
完全に舞い上がっております。
この日のゴルフは、20人のコンペでした。プレイ終了後、居酒屋での大宴会。優勝したわけでもないのに、主役は私でした。夜に入っていた仕事もお願いしてキャンセルしてしまいまして、遅くまで飲み明かしました。しょうがない奴ですよね。
さて、ホールインワン保険のことです。
この国には、ホールインワンをすると、そのプレーの同伴者、コンペの場合は、コンペ参加者、他、ゴルフに関して日頃お世話になっている人達へ、御礼をする習慣があるのです。欧米ではどうなのでしょうか。聞いたことないのですが。
つまりそのための保険です。
私の場合なんですが、保険にはいってたんですね、これが。本人がよく覚えてないくらいだったのですが、ゴルフ中のケガなどの事故に備えて入っていた保険に、たまたま、ほんの少しだけホールインワンの補償がついていたのです。たぶんホールインワン保険と呼ばれるものの中では、最も低い補償額と思われるのですが。
本当にゴルフが上手で、いつこの事故にあっても不思議のない方は、もっと大きな額の保険に入っているそうです。その保険で、ホールインワン記念コンペというのを自ら主催する方もいらっしゃるそうです。当然すべて奢りです。すごいのになると、それをハワイでやってしまった人がいるそうです。いったい、いくらの保険なんだろうか。掛金も高いんだろうな。でも、そういう人の場合、やってしまったときは本当にうれしいのだろうな。こうなるとギャンブルですねこれは。
私の保険の額では、コンペに参加した皆さんの住所を調べて、つまらぬ記念品を贈らせていただき、仲の良い人に記念ボールを配ったところで終わってしまいました。
意外と大変なんですね、ホールインワンて。
何故私なのかなと、今でも思いますけど。
でも、なんとなくうれしい災難ではありましたね、ちょっと。
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