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2023年11月

2023年11月22日 (水)

2023 プロ野球日本シリーズ観戦記 その2

タイガースは,38年前に日本一になってから,今回の優勝までに2度のリーグ優勝をしてるんですが,2度ともパ・リーグに敗れ日本一を逃しております。2003年のダイエー戦,この時は阪神が3勝2敗で王手をかけた第6戦,私,意を決して阪神ファンの友人と博多まで行ったですよ。しかしながら,その夜,早々に先発の伊良部は打たれ,逆王手をかけられてガックリ。モツ鍋を食べていたら,まわりのダイエーファンの人たちに、博多弁で慰められたりしまして,翌日は東京におりましたが,ダイエーの勢いそのままに敗れてしまいました。2005年は,このブログにも書きましたが,悪夢のロッテ戦は1勝もできずに散りました。
この2005年から18年経ち,巡ってきたチャンスではありますが,なんせパ・リーグの壁は厚く,まあ祈るような気持ちだったですよ。しかしながら,勝負事は蓋を開けてみなきゃわからないし,ともかく先に4つ勝てば良いという短期決戦なんで,選手も監督も悔いのない戦いをして欲しいっと。
戦前の予想,多くの野球評論家たち曰く,タイガースもオリックスも投手力の高い守りのチームであり,最後まで低い得点での接戦となるであろうとのことで,たしかに両チームの強力な投手陣はなかなか打ち崩せそうにありません。
ところが,始まってみると第1戦,今や球界のエースと云われ,間違いなく来季は大リーグで活躍しているであろうオリックスのエース,山本由伸が5回までに7点取られてしまうんですね。この阪神5回の攻撃で4点を挙げるきっかけになったのが,先頭打者佐藤のセンター前ヒットではあるんですが,この佐藤が次の打者の1球目に盗塁を決めるんです。岡田監督は盗塁のサインは出したけど,初球から行くとは思ってなかったと云ってますが、このプレイでピッチャーはちょっとリズムを狂わせ始めるんです。守っては村上投手絶好調で8−0のワンサイドで阪神が勝利します。
なんだか思いもかけぬ展開で先勝,でも,翌日はオリックスの二人目のエース宮城が立ちはだかり,後半も自慢の中継ぎ投手陣にかわされ,第2戦は0−8で阪神完敗です。
戦前の予想とは大違いの大差の1勝1敗から,舞台は京セラドームから目と鼻の先の甲子園へと移ります。
第3戦は,阪神伊藤とオリックス東の投げ合いで接戦,7回に5−1から5−4に追い上げた阪神は,オリックスの抑えの切り札,宇田川と平野に逃げ切られ惜敗。
第4戦は,先発オリックス山﨑福と阪神才木の投げ合いの接戦,その後両チームが繰り出す自慢の投手陣の守り合いで同点のまま9回へ,1アウトから近本が四球で歩きピッチャーのワゲスパックがバッター中野の時にワイルドピッチでランナー3塁となり、中野と森下は敬遠して満塁策,ここで4番大山がレフトへサヨナラヒット打つんですね,いや,家で見てたけど球場が揺れていました。この試合,実は阪神中継ぎ陣は7回8回にオリックスの猛攻を受け同点に追いつかれ,尚も逆転のピンチを迎えますが,ここで岡田監督は,なんと春先から不調でここまで一軍を外れていた湯浅投手をいきなり投入します。このアナウンスに球場はどよめきますが,湯浅はたった一球でセカンドフライに打ち取ってピンチを脱するんです。
これでシリーズは2勝2敗の対になりました。
第5戦は,甲子園での最終戦となります。この試合も阪神は押されます。というか,オリックス先発の田嶋を7回まで全く打てないんですね。田嶋は見ていて絶好調でした。阪神先発の大竹も好調で,ゴンザレスのソロホームランの1点だけに抑えていたんですが,7回に守備の痛いミスが出ます。セカンドに飛んだ打球を中野がエラーで逸らし,その球をライトの森下が後逸してしまい1塁ランナーがホームまで帰って1−0から2−0となってしまいます。このあとライトからベンチに帰ってくる時に森下は,観客席の方を見れなかったと後で語っています。
ところが,田嶋が7回でマウンドを降りて8回表を湯浅がビシッと三人で抑えると,流れは阪神にやってきます。オリックス自慢のセットアッパー山﨑颯一郎から、木浪,糸原連打,近本タイムリーヒットで1点返すと,さっきエラーした中野が送りバントを決め,ピッチャーは宇田川に変わります。ここで先程チョンボした森下がなんとタイムリースリーベースを放って逆点します。この時,多分、森下と岡田監督は泣いてました。この後も打線は止まらず打者一巡の6点,試合を決めます。
そして京セラドームに戻って第6戦,オリックスは2度目の大エース山本由伸を立ててきます。今度は,全く歯が立ちません。1−5,村上も悔し涙です。
さあ,泣いても笑っても第7戦,勝った方が日本一です。
オリックス先発は第2戦で手も足も出なかった宮城,阪神は青柳です。ここまでの流れを考えると,オリックスは前回宮城が万全の投球をしているし,青柳は本来のエースではあるけれど,今シーズンはもう一つ調子がよくありません。正直不安ではあり,多分、先取点を取られると苦しくなるだろうなと思いました。
そして,3回までどちらも引かない展開から,4回森下のヒットと大山の死球で1塁2塁,次のノイジーは宮城の速球に全くタイミングが合っていないように見えました。ところが,一球,裏をかくように投じられたチェンジアップを,見事レフトスタンドに放り込んだんですね,この人。3ランホームランです,宮城の落胆が手に取るようにわかりました。打線は次の5回にも追加点を奪い,青柳もよく頑張って5回の途中から伊藤が相手の反撃を断ち切ります。最後にマウンドにいたのはやはり岩崎,終わってみれば7−1,決着はついたのでした。
この9日間,連日,流れがどちらに転ぶかわからない好勝負でした。手に汗握り熱く応援してクタクタになりましたが,素直に両チームの選手たちに,ありがとうと言いたい気持ちです。
いい試合を見せてもらった。

オリックスも阪神も,それぞれのリーグで他チームを圧倒して来ただけの事はある,完成度の高いチームでした。オリックスは先発の一角にいた山下投手をケガで欠いたり,首位打者の頓宮が骨折して足に鉄板が入っていたり,杉本が足を痛めていたりで,ベストコンディションじゃないところもあったけど,やはり恐ろしく強いチームで,なんせリーグ3連覇ですから。あのちょっとひねくれたこと云う監督は,ちゃんと仕事してるよな。
阪神タイガースもここに至るまでは,なんせ長い道のりでした。金本監督も矢野監督も含めチーム作りに苦労はつきものでしたが,だんだんにチームは強くなって来ました。ともかく,38年前にセカンドを守り5番を打って日本一となリ、今年,全球団の最年長監督として悲願達成した岡田さんには,ちょっとお礼を云わんとね。

Neuse

2023 プロ野球日本シリーズ観戦記 その1

はてさて,大接戦・大熱戦となりました,今年の日本シリーズもようやくその雌雄を決しましたが、甲子園と京セラドームというごく狭い地域での対決にもかかわらず,内容的には昨今稀に見る面白さで相当に盛り上がったわけです。
この阪神タイガース日本一という,今年の一連の顛末には極めて個人的な思いがございまして,ここにこれを書かぬわけにはまいりませず,多分,長々と語ることとなりますが,どうかご容赦いただきたく存じます。
そもそも,この日本シリーズとは,プロ野球の2リーグ制の始まった1950年から今日まで73回続いておるわけですが,その中で阪神が日本一を成し遂げたのは,1985年のたったの一度だけなのです。そういうことだから,これほどの騒ぎになっているとも云えますけれど,これだけ人気のあるチームの割には,セ・リーグ優勝もたった6度でして,たとえば,私が小学生の頃に応援し始めてから初めてリーグ優勝した時には私は31歳になっておりまして,その次がそこから18年ぶりの2003年でして,私ほぼ50男となっておりました。その2年後に岡田カントクとなって優勝するのですが,また,そこから18年間,優勝フラッグは遠ざかり今年に至るわけです。
考えてみると,何が悲しくてそんな弱いチームを何十年も贔屓にしているのだろうかとも思います。まあ,私の場合,なんか長年にわたる気長な趣味のようなところもあり,このところあんまり熱くもならず,付かず離れず見守ってるようなもんであります,盆栽かよ。テレビ中継などを見ておりますと,勝っていても負けていても,ものすごいテンションで応援されているトラキチの方々には,頭が下がることではありますが。
終わってみれば日本プロ野球界を制覇した今年は,桜咲く春先から秋の紅葉の頃まで,一年中目が離せず,実に嬉し楽しかったのですが,不慣れなもので,しばらくこうであって欲しいけど,そんなことは多分ないでしょうが,これが毎年続くとなるとちょっと大変なのかな,などと思います。
こちらも歳をとってきてますから,最近はそういった大人しめの落ち着いた感じのファンになってるところもありますが,前回の日本一の時は38年も前で,阪神ファンとしては31歳で初めての優勝でしたから,それは激しく応援していました。リーグ優勝は神宮のヤクルト戦で,しっかり球場で観戦しておりまして、確かゲームはもつれて,3−5で2点負けてたんだけど,9回に掛布がソロホームラン,岡田が2塁打打って佐野の犠牲フライで同点,そのまま中西がヤクルトの反撃を抑えて引き分けに持ち込みます。スタンドのファンは引き分けで優勝が決まるのかどうかよく分かってなかったんだけど、ラジオ聴いてる人とかがいて,だんだん引き分けでも胴上げだということが分ってきて、最後は大騒ぎみたいなことだったと思います,いやすごい騒ぎでしたね。
そして日本シリーズ,第1戦の西武球場にも行きましたね。敵は広岡西武,当時徹底した管理野球で築かれたライオンズ野球の評価は高く常勝球団となっており,戦前の予想は阪神不利とも囁かれておりました。しかし,このゲーム始まってみれば,先発池田のこれまでに見たこともないような好投でなんと完封,打っては8回,バースが工藤から3ランを放ち完勝でした。帰りの西武電車は阪神ファンで満員,全員が応援用のメガフォンで電車の天井叩きながら池袋に着くまで六甲おろしの大合唱,本当にどうかしてましたね。
その次の日から私は仕事で網走にロケに行かねばならず,その頃の日本シリーズの試合はすべてデーゲームでしたので,TV観戦も断念してたんですね。ところが,北海道網走地区は,連日雨で撮影はできずお休みとなります。そしてその間,甲子園球場も西武球場も日本晴れで毎日大熱戦。
私たちロケスタッフは,旅館のテレビやロケ車のテレビで大声援を送っていたようなことでした。
シリーズは阪神が2戦を先勝し,甲子園に移ってからは西武が巻き返して2勝,第5戦は掛布の3ランなどで阪神が勝って王手をかけます。第6戦は西武球場に戻っての決戦となりましたが,網走はこの日も雨で撮影は中止となります。そして晴天の所沢では,長崎の満塁,真弓のソロ,掛布2ランホームランと,ゲイルの完投勝利で,阪神タイガースは悲願の初日本一を達成しました。
いまだ網走で1カットも撮影ができていない私どもスタッフですが,その夜は,祝タイガース優勝の大宴会となりまして,私はオールスタッフに胴上げをして頂き,何度も旅館の天井に頭をぶつけて泣いておりました。不思議なことに,その翌日からオホーツク海に停滞していた前線と雨雲は消えてなくなりまして,撮影はつつがなく終了します。だいたいそんな無駄な仕事してスポンサーに叱られそうですが,でも胴上げの渦の中にスポンサーもおられましたので,はい。

それから38年の歳月は流れ,果たして2度目の日本一は達成できるのだろうか。リーグ優勝だって18年ぶりなわけで,けっこう苦労したのだけど,このところプロ野球はパ・リーグが圧倒的に強いじゃないですか。日本シリーズも,セ・リーグはこの10年だと一昨年ヤクルトが一回勝っただけだし,その前の10年だってセ・リーグは3回しか勝ってないわけです。そもそも今回の相手のオリックスは強いです。あの強豪パ・リーグ軍団で3連覇してるんですよ。  
つづく

Bass