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2012年10月17日 (水)

最強のふたりが、Like someone in loveで、北のカナリアたちだった

このところ、なかなか映画を観る時間がなくって、しばらく映画館に行かなかったと思ったら、ここにきて3本続けて観ることになり、これがまた、それぞれに種類は違うのだけれど、すごくよく出来た映画だったんです。

「最強のふたり」は、私のまわりで実によく映画を観ている友人がそろって、すでに今年のベストワンだと言うだけあって、久しぶりにとても良いフランス映画をみせていただきました。

この最強のふたりの人生には、それぞれすごく重いものを抱えているのだけど、最強のエスプリとユーモアでそれを乗り越えてしまう爽快感と、ただ気持ちがいいだけではない深さがあります。ふたりのキャスティングは実にすばらしく、これからもとても気になる俳優たちで、また、この話が実話であるということも、読後感をより深いものにしました。

当初それほど多くなかった上映館も、途中からどんどん増えていったようで、観客というものは正直で、いい映画がかかれば、口コミでどんどん映画館にやってくるものなんだなあと思いました。

私が観たのは、新宿の武蔵野館だったんですけど、そこで同時にかかっていたのが、

「Like someone in love」で、これは会社のF井さんに、絶対に観るべきだと強く薦められたので観たんですが、(この人に薦められるとわりと観てしまうんですけど)これはこれでとても面白かったのです。

監督脚本がイランの名監督アッバス・キアロスタミなんですけど、この人が日本で日本の俳優とスタッフを使って撮ったもので、ともかく驚くのが、本当に現代の日本をよく捉えていて、おまけにこれ、3人の日本人の会話劇でもあって、イランの人がよく脚本書いて演出してるなっていうところなんです。

観客は日本の日常の中をゆっくりとすすんでいくお話に、なんとなく付き合っているうちに、気がつくとこの監督が作りあげた世界にすっかり連れて行かれた感じがするんですね。この3人の出演者、おじいさんと、若い男と女なんですが、実に造形が見事でリアルなんです。ほんとにこの監督、外国人なんだろうか。だいたい加瀬亮とかにどうやって演出してるんだろうか。でも、俳優はものすごく理解してやってるように見えるし、映画という共通言語は、天才にかかると簡単に国境を越えてしまうのですね。びっくりしました。

それともう一本、これは邦画なんですが、11月に公開予定の「北のカナリアたち」の完成試写会で、できたての初号を見せていただきました。あまり予備知識もなく、油断してたわけではないのですが、ともかく号泣してしまった。後半からラストに向かって、もうどうしようもなく涙が止まりません。最近、歳とって涙もろくはなっているのですが、そういうことではなく、いや、泣きましたよ。ひさしぶりに。

スタッフもキャストも本当によい仕事をされてるんですが、順番に行きますね。

侮ってたわけじゃないんですけど、阪本順治監督はやはりいい監督さんです。この方にはたくさん名作があって、個人的には「どついたるねん」「顔」、昨年の原田芳雄さんの遺作となった「大鹿村騒動記」など好きなんですが、この「北のカナリアたち」も、きっと代表作になると思います。

映画の中で6人の若者たちと、彼らの子供時代の話が行ったり来たりするので、子供のシーンがたくさんあるんですけど、子役の使い方がうまい監督さんなんですね。自論ですけど、名監督って昔から子供のシーンがうまいんですね。





Moriyamamiraiそして、この6人の若者を演じた役者さんたちが皆よかったです。現代日本を代表する頼もしい俳優さんたちです。TVドラマもよいけど、これからは映画にたくさん出てほしいなと思ったのです、おじさんは。

登場順、森山未来、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平、以上。

そして忘れてはならないのが、主演女優のわれらがこの方、この方がいらしたからこの映画はつくられたわけですから。映画の中では、この6人の子供時代の小学校の先生の役で、40歳と20年後の60歳を演じておられます。かつてこの国を代表するアイドルであったこの方の実年齢を、私達観客は知っているだけに、その姿と演技には心打たれます。氷点下-30℃のロケ地での撮影。海を泳いだり、煙突のはしごを駈けのぼったり、本当にこの方はおいくつだったんだっけかと思いました、ほんとに。

キャメラマンの木村大作さんが初めて阪本監督と組んだことも、映画の完成度を上げました。木村さんの大自然の映像には定評があり、今回の雪・海・島の風景も見事です。余談ですけど、あの高倉健さんが雪の中で立っている風景はほとんど木村大作さんがお撮りになってます。それと、ご自身で監督をおやりになるほど映画を知り尽くした方なので、時間軸と人間関係が入り乱れたこの複雑なお話を、非常に分かりやすくしているのは、木村さんと阪本さんによるところが大きいと思われます。

いろんな意味で超大作ですし、情報過多の傾向はあり、つっこみ所がないわけじゃないんですけど、そんなことはどうでもよいほど、観てる方は引っ張り込まれ最後は鼻をすすることになります。お見事なんじゃないでしょうか。はい。

 

久しぶりに続けて映画館で観た3本は、つまり、あたりでした。

こういうことがあると、また映画館に足が向きますね。そういうもんです。

 


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