« 優勝請負監督と優勝請負ストッパー | メイン | 台湾・満腹紀行 »

2012年1月13日 (金)

走るということ

最近、「走る」ということに興味を持っている人が、私の会社のまわりにもいて、たとえば、転覆隊のW君や、キャンプ好きのO君だったりするんですが、今度の社員旅行は地方のマラソン大会に皆で行って出場しようなどと言っているわけです。そのO君が丸い目をまた丸くして、この本 面白いですと紹介してくれたのが、「BORN to RUN」という本で、これ、たしかに本としては面白そうで、これから読み始めるんですけど、でも少なくとも、わたし自ら、走るという行為に興味を持つことは、多分ないだろうと思うんですよ。今までの人生で、人から強制されることなく自分から走ったということはないわけで…

そんな話していたら、ふと、はるか昔、10代の頃、走ることを面白がっていた時期がちょっとあったことを思い出したんです。

高校生の時、私は何の部活にも入らず、やたら映画ばかり見ている奴だったんですけど、やっぱなんか身体がなまってるなあと感じていた時、友達がプールの下の体育会の余った部室にバーベルが積んであるのを見つけて、ちょっと仲間集めて、皆で筋肉モリモリになろうと云い始めたんです。でもまあ、筋肉モリモリっていうのも、あんまり興味ないし、バーベル上げながら、放課後の運動場で体育会の練習見てたら、みんなよく走ってるんですね。それで仕上げは、学校から少し離れた小高い山まで往復5km位のコースを走るんです。その中で、最も速く、最もきれいな形で走るのが、サッカー部のエースストライカーのI 田君でした。

彼とは同じ路線の汽車通学だったので、毎朝一緒に通学する仲の良い友達でした。いつもしょうもないいたずらばかり考えてる、ちょい悪系で、そのあたりが私と気が合ったのか、まあそうやってるぶんには、何の変哲もないそこらへんの高校生なんですが、サッカーやってるときと、走ってるときは、超カッコイイのですよ。

なんだか、I 田君の走る姿みて、俺も走ろうっ!と思ったわけです、急に。

そして、これが意外と楽しかったんですね。テニス部女子なんかも一緒に走ってるし、自分なりに、だんだん速くなっていくのも自覚できるんです。私、短距離はまるで駄目なんですが、そういえば中学の時、1500mとかってわりと速かったよな、などと、自信も出てきたりして、もっと速く走るにはどうしたらいいんだろうなどと、考えたりもしました。でも、通学中I 田君と、走ることに関して話をしたことは一度もありませんでした。

ていうか、彼はそのことに関して全く別次元の奴でしたから。校内マラソン大会は、いつもぶっちぎりの1位でしたし、サッカーでは校内でただ一人、国体に出場してたと思うし、彼と走ることを語るなんて、恐れ多かったんです。

それでも、最後の校内マラソン大会では、何百人かで60番に入って大満足。I 田君は、相変わらず、はるか前方を駆け抜けて行きました。もちろん1位で。いいフォームだったなあ。

そして、そのうち受験になって、それぞれ進学して、そんなこともあったよなという程度の記憶になってしまいましたが、

その後もI 田君は走り続けてました。地元のサッカーの大学リーグで得点王になり、全日本大学選抜に選ばれて、東京の合宿に来た時は、私は車を借りて、合宿所まで彼を送って行きました。大学を卒業した後は、サンフレッチェの前身である自動車会社のサッカー部に入り、FWで活躍しました。彼は、母校の誇りでしたし、あの力強い走りは、いまもはっきり覚えています。

その後、お互いに忙しく、時間が経って疎遠になり、年賀状を交わすくらいのことになっていましたが、昨年の秋に用事があって、故郷の高校時代の友達に電話したとき、I 田君が春に病気で亡くなったことを知らされました。あの強靭な人が・・・信じられませんでした。

いろいろ思い出します。私が小さな会社を始めた時、わざわざ訪ねてくれたことや、私が結婚して初めて帰郷した時、自分の奥さんと子供を連れて、会わせに来てくれたことやら。

書いてたら涙が出ます。

インターネットで、彼の名前を検索したら、もう何年も前から、自身の母校の大学のサッカー部の監督になっていたこと、2007年にはそのチームを率いて、初の天皇杯出場を決めたことなどがわかりました。それに、その記事には、その時彼が悪性のリンパ腫を患っていたことも書いてありました。

何にも知りませんでした。自分に腹が立ちました。

もっと歳とって、君の若い時の自慢話を聞きながら、酒を飲みたかった。どうやってあんなに速く走れたのか、もっと前に聞いとくんだった。

 

そんなこと思いながら、自分がいま走ったらどうなるんだろうかと考えました。

デブった体を支え切れず、ひざが壊れるな、たぶん。

Hashiru 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

コメントを投稿