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2020年1月28日 (火)

ただならぬ韓国映画

スターウォーズも完結するし、寅さんも帰って来るし、年末年始の映画街もいろいろとにぎやかですが、

韓国映画界の鬼才、ポン・ジュノ監督の「パラサイト」が、カンヌでパルム・ドールを獲り、アカデミー賞の呼び声も高く、もしアカデミー賞獲ったらアジア初だそうで、ともかく大評判です。

いや、よくできてました。たしかに唸ってしまう完成度の映画であり、連日映画館は満員だし、その勢いはしばらくおさまりそうもなく、間違いなく大ヒットになりそうです。

社会の底辺からどうやっても這い上がることのできない家族と、かたや成功者を絵に描いたようなIT会社の社長の一家という対比があり、その両者が接点を持つところからお話は始まるんですが、そもそも脚本としてこの状況を思いついたことは勝利なんでしょうが、物語の設定は、実に厳密に仕組まれており、それに加えて、登場してくるこの二家族の人物像は、かなりこと細かく造形してあって、その辺りはちょっとため息が出るくらいうまいわけです。

Parasite

この出演者たちが、監督が仕組んだ動線に沿って動き始め、徐徐に物語は進行します。もう観ている方としては、ただただ映画の中に引っ張り込まれてしまうわけですが、これはよくできた映画が必ず持っている観客を巻き込んでゆく力なんですね。

ストーリーはあるテンポで、たんたんと進んで行きますが、そこには絶妙の緩急のリズムがあって、それは心地よくさえあり目が離せません。

映画が始まってしばらくすると、この映画が持っている、ただならぬ顔つきに気付かされ、間違いなく掘り出し物に当たった確信が生まれます。それは、次々と現れる人物の登場の仕方だったり、その場に流れている空気感であったりするんですが、それを支えているのは、撮影という手続きにおけるすべての技術です。

そんなにたくさんの韓国映画や、韓国ドラマを観ているわけではなく、あんまり詳しくもないんですが、韓国には本当に良い俳優が多い気がします。もちろんうまいということなんですが、それだけじゃなく、その映画を作品として観客に届けるために、その役の人物になりきる力というか、出演者としてその映画をより深いモノにするための力量とでもいうのでしょうか。

そして、そういった人材というのは、当然、映画を作る現場のレベルが高くないと育たないわけです。脚本や監督であったり、撮影であったり、照明であったり、美術も録音もそうです、ちょっとそういうバックグラウンドを強く感じるんですね。

前にどなたかから聞いた話ですが、かつて日韓共同FIFAワールドカップを成功させた時に、かの国は、その時出た利益をすべてエンターテインメント産業に投資したんだといううんですね。その中には当然映画産業も入っているわけです。それだけのことが理由じゃないだろうけど、韓国という国の映画に対する情熱のようなものは、いつも感じているわけなんです。

アジアの一角の、映画が大好きなこの国から、まさに世に問う問題作が、世界に向けて発信されたということでしょうか。

 

そして、映画の後半は、ジェットコースターに乗せられたような激しさでラストに向かって行きます。

個人的には、終盤、ちょっと惜しいなと感じることがないではないんですけど、

映画の終息のさせ方というのは、ある意味、監督からのメッセージなので、観客の一人一人が受け取って感じるべきことですし、ネタばれにもなるので触れられないですが、

なんせ一見の価値のある、まだ観てない方には是非観てほしい、映画というものの面白さを満載した映画ではあります。

観た人と話をしたくなる映画というのは、まあ名作なんでしょうね。

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