二合句会
「二合会」という会があって、何年か前から参加しておりますが、要は5人ほどのオッサン達が集まって酒飲んでる会なんです。そもそもどうして始まったかと云えば、僕らの業界の、ある大先輩が広告の会社をリタイアされてしばらくした時に、同じようにリタイアした仕事仲間で、たまに集まって飲もうかと云うことが、きっかけだったようなんですね。
それを始めたお二人の大先輩が、これからはちゃんと健康にも留意して、しっかり歩いて集まって、酒量は二合と決めようというふうにおっしゃって、「二合会」というネーミングになったんです。そのお二人が自宅から歩いて丁度よい神楽坂の毘沙門天に夕方5時半に集合するのが慣わしとなり、まあ建前としては、二合飲んだらおしまいという会なわけなんですね。最近ではビールと焼酎は別だとかいう話になったりしてますが。
私は厳密に云えばまだリタイアしてないのですが、まあお前も仲間に入れたるから来いということで、酒好きの特権で参加させていただいとるんです。そんな私を含め、今のところ基本5人のメンバーなんですが、現役時代は、あまり気軽にご一緒するのも憚られる大先輩方でしたから、この会で少しは慣れ慣れしくお近づきになれ、それはそれで嬉しくはあるんですけれども。
集まるタイミングは、これも特に決まってはいないのですが、なんとなく季節の変わり目にやるのが習慣になっております。
この会にちょっとした変化があったのが、一昨年の夏だったんですけど、ある時いつものように飲んでいたら、なんか俳句の話になったんですね。それは、「二合会」の中心メンバーのT先輩が、いくつかの句会に入っておられて、俳句の活動をされており、その話をうかがっておったところ、同じく中心メンバーであられるK先輩が、
「次の会から、俺たちもやろう!」と鶴の一声が出まして。
ちなみに、T先輩は元コピーライターで、K先輩は元アートディレクターなんすけど。
まあ、このお二人が決められたことには、ほかの3人は逆らいませんので、とにかくやってみようということになったんです。
もちろん、日本人ですから今までに俳句というものを読んだことはあるんですけど、自分で詠んでみようという気はサラサラなかったのですね。
ただ、それ以降、「二合会」は「二合句会」と名を改めることになりました。まあそれほど大げさなことではなく、いつもの飲み会の初めの小一時間ほどが、句会になっただけなんですが。
どんなふうにやるか簡単に説明しますとですね。
まず、このT先輩に師匠になっていただき、師匠の俳号は「三味先生」といいますが、我々も皆、俳号を決め、句会ではその名で呼び合いますね。そして、春夏秋冬に一回ずつ会を開きまして、その会の約一月半くらい前に、三味先生から兼題という形で季語の提案があります。その兼題を詠みこんだ句も、自由に詠んだ句も含めて1人が3句、句会の一週間前に先生に提出します。これはメールで送ることになっておりますが、そこで5名で15句が揃うわけです。句会の当日には、誰が詠んだのかわからない状態で、先生が15句を書き出して下さっています。会が始まりますと、一人一人がよいと思った句を自選はせず4句選んで投票し、その句を選んだ理由を述べます。つまり、20の票が15の句に投票されるわけです。それから、票を多く集めた句から順に詠み人が知らされ、作者はその句を詠んだ背景や心情などを述べます。
そのような小さな句会なんですけど、いざ俳句を詠もうとして考え始めると、意外や結構悩むもんでして、たった17文字に、いかに言葉を託するかやってみると、深いんですわ、これが。
そんなことなので、いざ票が入って、どなたかがこちらの意図を判って下さったりすれば、やはりちと嬉しいし、全く票が入らなければ、伝わんなかったんだと、ちとがっかりしたりして、なんつうか小さな一喜一優があるわけなんです。
この句会が7回、7季節続いてるんですが、じゃ、どんなもんを詠んどるんじゃと云われればですね。たとえば、この前の、私の春の二合句会の3句とその評価なんですけど、、
・夜気温み寄り道照らす朧月
これ、めずらしく4票いただけ満票だったのですが、師匠からは、「温み」と「朧月」が、季重なりであるとの指摘を受けました。そうかあ、未熟でした。
・出遅れて土手の名所は花吹雪
これは、1票だけいただきました。それともう1句は票が入りませんでしたが、
・吹き上がるトリプルサルコウ春一番
これは、ちょうど先生からの兼題に「春一番」が出題された時に、オリンピックのフィギアスケートを見て興奮してたもので、ちょっといいかなと思ったんだけど、空振りでした。
この程度で、俳句やっておりますなどとは、とても申せぬお恥ずかしい限りなんですが、季節毎に一度、「二合句会」の日程が決まると、ちょっとやる気になったりしておるわけであります。
ちなみに、私、俳号は、師匠の「三味」先生より一字もらいうけ、「無味」と称します。はい。
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