バイトに学んだこととか
この春頃から、うちの会社の採用に応募してくれる学生さん向けに、会社のこととか、この業界で働くこととかについて、月2くらいで会社のFacebookにコラムみたいなもの書いてたんですけど、、自分の息子くらいの年齢の若者に何か書くにあたって、自分が若い頃のことを思い出したりしてたんですね。
ただ、考えてみると、私の場合、あの時期ほとんど就活ということをしてなくて、今の仕事に就いたのも、本当にひょんなことで、アルバイト始めたことがきっかけだったんですね。そういうことを思い出したんですけど、この仕事のアルバイト始める前にも、学生のときには、結構いろんなバイトやった気がします。
大学一年の夏休みに、どっかでバイトして金貯めようと思って、学生の夏休みのアルバイト紹介所みたいなところがあって行ってみたんですけど、北海道とか軽井沢とかで、ひと夏働くコースとかあって、なんかいいなと思ってたら、結局、炎天下の大森の工場で3週間ていうコースになってしまい、これが、いや、暑かったんですわ。
鉄工所の雑役工という仕事で、一日中、荷物運んだり、ハケで塗料を塗ったりヤスリかけたり、工場の中は一切冷房とかなくてサウナ状態。始めた頃はとにかくクタクタで、工場街の定食屋で食べる昼飯もどんぶりのメシ食えなくて残したりしてました。ただ、だんだん慣れてきて、多少仕事になってきたんですけど、それはただ要領が良くなっただけのことであって、工場の死角でさぼってるとこ見つかっては、どやされて追い立てられたりしながら、毎日どうにかこうにか定時まで働いたわけです。
この工場には当然プロの工員さんがちゃんといるんですが、その中には僕らよりぜんぜん年下の少年たちもたくさんいて、彼らは一年中働いてるわけで、僕たち学生さんは甘っちょろいなということも、痛感せざるを得ないんですね。でも、逃げ出したい気持ちを押さえながら、予定の日数が終わってバイト料もらってから帰郷したんですけど、なんか不思議な達成感はあったんですね。
それから、ここに書ききれないくらい、いろんなバイトやりましたね。家庭教師は柄じゃないからやんなかったけど、なんか、いずれ楽で効率の良いバイト探すんですが、そんな都合のいい話はなかなかなくてですね。働きに対して報酬はどれもまあ妥当なわけです。それより、働いてるといろいろ面白いこともあり、それなりのやりがいもあったりして、なんか楽してるわりに、ずいぶんお金もらった仕事もあったけど、そういうのはちょっと気持ち悪いわけですよ。やっぱ額に汗しなきゃ仕事じゃないんだよなみたいな、殊勝なこと思ったりするわけです。
多少割がいいのは、運転の仕事で結構やりました。車の免許でも、あればそれでちょっと有利だったりするんですね。おかげでずいぶん道は憶えましたしね。
食べ物屋もいろいろありまして、ある時期、友達とローテーション組んで、自由が丘で焼き鳥焼いてたことがあって、当時、私ガリガリに痩せていて、吉田拓郎の“結婚しようよ”のせいじゃないけど、髪の毛が肩より下まで伸びてて、髭も伸び放題で、ちょっと十字架のイエスさまな感じだったもんで、よく酔っ払いの客から、
「おい、キリスト、3本焼いてくれ。」とか、
「キリスト、一杯おごるぞ、飲め。」とか、
「キリスト――!モツ焼いてくれい、モツ。」とか云われて、
「ちょっと、お店にキリスト関係の方いらしたら困るからやめて下さい。」とか云ってましたが。
あと、一番長くやったのが、デパートのお中元とお歳暮の配送なんですけど、夏と冬に約一カ月ずつなんですが、毎日軽トラに満載した100個~200個くらいの荷物をさばくわけです。私の担当地区は、一ツ橋、神田神保町、九段、富士見町界隈が主だったんですが、たまに丸の内の官庁や大企業のビル街とかに行くことがあって、ただ私の恰好は、一見すると、明らかに過激派学生なもんで、そこらじゅうで職務質問されて、全く仕事にならないんではずしてもらったこともありましたね。ただ、仕事って長くやってると上達するもんで、数年やったら、その配送所では私より仕事を早くこなせるバイトはいなくなって、新米の倍のスピードで仕事上げてましたね。だから稼ぎは良くてですね、半年間でできる借金は全部このバイトで返してましたから。自慢になりませんけど。
このバイトが良かったのは、荷物を届けた先の人が、個人でも会社でも必ず喜んでくれることで、贈り物がきていやな顔する人いませんしね。何か今でも覚えてるちょっと嬉しかったことが何件かありましたね。
そんなふうに、働いてお金稼ぐのは、どんな仕事でも大変なんだなということを教わったり、働いてると結構いろんな人に会って、東京にはほんとにいろんな人がいるんだなあというのも面白かったし、ためになった気がします。
アルバイトは、大人になって働く前の入り口の練習みたいなところがあるけど、仕事に楽なことはないし、簡単なものもないこともわかり、でも、やってると意外に楽しいこともあることも色々わかって、プロになるということを、ほんの少しだけ学習できる場かもしれんなと思ったわけです。
そんなこと思いながら、、これから社会に出て働く若者たちには、この先、仕事にまつわるいろいろな泣き笑いを経験しながら、いろんなプロになってくんだろなと、なんか応援したい気持ちになったんだなこれが。
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