ラーメンといえば最寄りのたんたん亭
前回に続いて食べもの屋さんの話です。これも、どの街にもと云うか、人の住んでるところには、探せば必ずあるのが、ラーメン屋さんでして、この国の人たちはほんとにラーメン好きです。
子供の頃から、この食べ物はいつも身の回りにあったし、東京でも、覚えてる限り何度もラーメンブームというのがあって、その都度、店の数も増えていったと思います。
昔は、よく夜中まで飲んだくれていて、最後にラーメンで腹ごしらえして仕上げというパターンで、毎晩どっかの飲み屋街の片隅や、屋台で、ズルズルワシワシいただいておりました。これは昼に食べることもあって、いったい今まで何杯のラーメン食べたんだろうかと思います。
僕らの若い頃は、九州に行けばあたり前だった豚骨味が一気に全国区になって、トンコツコッテリラーメンはかなり主流になりましたが、札幌を基点にした北海道系、みそ味、塩味、しょうゆ味も、全国にファンを増やしております。まあ、いずれにしても、そのお店によっていろんなタイプの味があって、それを支持するファたちが、そのラーメン屋をささえていると云う構造になってるんですね。
そんな中、若い時は、こってりスタミナ系を深夜に食していたんですけど、年齢を重ねて来ますと、あんまりくどいのは敬遠しがちになりまして、コロナ禍以降、夜中の繁華街にもあまり行かないこともあり、最近は、もっぱら最寄りの駅前にある「支那そばたんたん亭」と云う、ジャンルで云えば東京風ラーメンなんでしょうか、ともかくラーメンといえば、ここさえあれば満足という状態です。
ラーメンを語りますと、もちろん十人十色ですし、人によって好みも背景も違うんですけど、私、こちらのラーメンは個人的に東京一押しであります。付き合いも長くてですね、この街に越してきた1989年からですから、30年以上になります。当時、この街に住み始めたという話を、仕事の先輩のAZさんにしていたら、彼が急に座り直して、
「その駅を降りて右に行くとすぐに、たんたん亭という名の店がありますが、これは至極正しいラーメン店です。」と言われたんですね。
AZさんのおっしゃることは、日頃から食べ物に限らず何かにつけて信頼しておりますので、わりとすぐに行ってみたわけです。
いわゆる奇をてらったところのないオーソドックスなラーメンで、軽くちぢれた真っ直ぐ麺に、なんとも云えぬ深みのある醤油出汁スープに、シナチクと叉焼ときざみネギとのり一枚というシンプルさなんだが、それが非常にバランスのとれた一品となっておるのですね。この基本型にワンタンを載せたワンタンメンは人気のメニューのようで、それを頼んでる人がわりといます。ワンタンは、肉ワンタンとエビワンタンがあり、その両方が入っているミックスワンタンメンというのが、この店のちょっとした贅沢な喜びのようです。
チャーシューメンにそのミックスワンタンを載せた、チャーシューミックスワンタンメンというのが、このお店でできる最も豪華なメニューで、私はまだやってませんが、いつだったか隣の席で近くに住む編集者の石川次郎さんが食べておられるのを横から見たことがあります。
メニューといえば、それ以外は煮たまごと餃子とビールくらいなものです。席はカウンターだけで10席くらいのものですから、店の前によく人が並んでいますが、ここも長居する人はいませんから、ちょっと待ってればすぐにありつけます。
そういえば、初めてこの店に来た時に、ラーメン作ってる職人さんから、来月でこの店は閉めるんだと言われて、すごくうまかった分、かなり残念がってたんですけど、その2人の職人さんは、1人は目黒で、1人は調布で、ほぼ同じメニューの店を始められて、そのどちらの店にも後になって行ってますが、結局原点である浜田山「たんたん亭」は、閉店することなくクオリティを保ちながら、今も存在してまして、ほんとに助かっております。
ともかく、このラーメンという食べ物は、長い歴史の中で多くの人たちの手で多くの人たちに食べる楽しみを送り続けて、どの土地にも街にも根付いていまして、若い頃は旅の途中に全国の港、港でいろんな出会いがありましたが、今、自分にとっての故郷みたいなラーメンというのは、たんたん亭のこの味なんだなと思う、今日この頃なんです。
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