開脚ストレッチ大作戦
わたくしこと、身体が硬いということにおいては、人後に落ちない人でして、このことには自信すら持っておりますが、何の自慢にもなりませず、むしろ引け目と申した方が正しいかと思います。
これはずいぶんと昔からでして、体育の時間に柔軟体操などをしておりますと、よく
「ふざけてないで、真面目にやりなさい!」
などと、注意されたのですが、本人はいたって真面目にやっているわけです。
たまに、旅館などに泊まった時に、マッサージの方に来て頂くことがありますが、必ずといってよいほど、
「からだ、かたいですね。」と云われます。
いわゆるギックリ腰というやつも、30代半ばでやってまして、これはそこまでに積み重ねた不摂生も起因してるんですけど、身体の硬さも大きいと思われます。
もっとも、もともと硬いうえに暴飲暴食暴喫煙に睡眠不足を重ね、その硬さに磨きをかけてしまったふしもあり、何度目かにギックリやった時にかかった鍼灸治療師のトーゴーさんには、その後長いことお世話になることになるんですが、この人からは、
「おまえの背中には、鉄板入ってるのか?」と云われました。
それからギックリ腰に対する恐怖は少し教訓になったので、多少の運動とストレッチのようなことはやるようにしてるのですが、基本的なこの体質は、きちんと改善されることは無いままです。
そんな去年の秋ごろ、今や私の大切なお友達のAZ先輩から、
「『ベターッと開脚』できるようになる本を知ってますか?」
と云われ、全く知らなかったんですけど、
「その本、今度会う時に一冊あげるから、一緒にやってみよう、開脚!」と誘われ、
あ、そうそう、このAZさんも、ものすごく身体が硬いんですね。
ともかく、一緒にやってみることにしたわけです。
聞くところによると、この本は、すでに何百万部か売れてる大ヒット本で、気が付けば、大きな本屋さんの目立つところにドカンと平積みしてあります。
この本書いた人は、大阪のヨガインストラクターのちょっとスタイルのいいわりかし美人のおばちゃんで、その後ときどきテレビで見かけるようになります。
すごいのは、この本に書いてある指導に従って、開脚してベターッと胸を床に付けれるようになった人が続出していることなんですね。ま、そう書いてあるし、そういう人たちの写真も載ってるわけです。
それと、もう一つすごいのは、そこに書かれてるやんなきゃいけないストレッチが、一日5分くらいの実に簡単なことだということで、これは、AZさんも力説しとられます。
「これなら、僕にもできるかな。」と思ったんですね。
そこで次の朝から始めました。カミさんのヨガマット借りて、あとはタオルが一本必要なだけで、全くたいしたことではないんです。当然やってる間はちょっとあちこち痛かったりしますが、あんまり痛くすると逆効果だと書いてあるし無理はしない、だいたい5分かそこらですしね。やってると犬が寄ってきて邪魔するんですけど、その間は廊下から閉め出しとけばよいわけです。こんなことで、ほんとに開脚できるようになるんじゃろかと思いつつ、だまされたと思ってやってみたわけです。
それで、結果から申しますと、全く開脚できるようにはなりませんね。私の場合、やっぱり筋金入りに身体が硬いようです。1300円の本で開くようにはならないんですね、やっぱり。
ただ、負け惜しみじゃないんですけど、これ何だか身体には良いように思います。ちょっと身体のあちこちがシャキッとする気がするし、ランニングで痛めてた膝もちょっと良くなった気がするし、とりあえず、まだ続けてはおります。まあ5分かそこらですし。
それからしばらくして、AZさんと飲んだときに、
「開脚できるようになりましたか?」と尋ねたんですけど、
AZさんも、やっぱり開かないようで、この方もやはり筋金入りだったみたいで、またしてもお互いに仲間意識を強めたようなことでした。そして、
「脚は開かないんだけど、これやってると、身体になんかシンが入るような気がして、続けてはいるんですよ。」と、私と同じようなことを、遠くを見るように申されました。
その後、あらためてこの本見て思ったんですけど、この本に載ってる開脚できるようになった成功者の写真は、みんな、おばさんかおばあさんなんですよ。
このストレッチっておばさん向けってことないかなあ。どうなんですかねえ。
おじさんとしては。
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