Ipadでみる ウォン・カーウァイ
あのAmazonが、映像配信を始めることになったそうで、すでにGyaoやTSUTAYA、また各テレビ局の参入も始まっており、何万本という映画や番組のコンテンツが、インターネット上を行きかうことになるのでしょうか。ちょっと選ぶ方は大変そうですが。
考えてみると最近あんまりレンタルビデオ屋さんに行ってないですね。まあ、わりと最近のたいていのものは、iTunes Storeでみつかるし、やはり特別のものはないのだけど、というか、そういう意味では肝心なものはなかったりするのだけど、だんだんにipadで観れる映画のラインナップは充実してきてる気がしますね。
レンタルビデオ屋をウロウロしてるうちに、意外な掘り出し物を見つけたりすることはなくなるけど、題名がわかれば探し出す手間はないし、出演者や監督の名前で検索かけるのは楽ですよね。
先日も、ウォン・カーウァイで呼び出してみると、わりとズラッと出てきて、久しぶりに次々と観なおしました。前に検索した時には、見つからなかったので、最近そろったのだと思います。
1994年の「恋する惑星」は、香港の雑居ビルを舞台に若者たちを描き、クエンティ・タランティーノに絶賛されアメリカでの配給を決めた彼の出世作で、たしか私も、これを最初に映画館で観たと思います。この映画は2つのエピソードでできており、本来この映画で描かれるはずだった3つ目のエピソードが、次の「天使の涙」となり、これらの映画には映像作家としての彼の新しい試みがあふれています。そして忘れてはいけないのが撮影のクリストファー・ドイル。ほぼ全部の作品を担当していて、その映像が当時、相当斬新だったことを覚えています。
「欲望の翼」は、今回のラインナップには入っていませんが、1990年に公開されたデビュー2作目で、カーウァイ独特の映画スタイルを完成させたといわれています。1960年代の香港を舞台に恋愛模様を描いており、その続編といわれている2000年の「花様年華」も、これは今回のラインナップにはまだ入ってませんが、2004年の「2046」も続編とされており、このあたりは映画としてかなり見応えがあります。
この人の映画は、常に実験的で新しいという評価はもちろんあるのですが、その前に、映画としてかなりしっかりした骨太さがあります。それは、たとえば俳優が演じるキャラクターの存在感の強さだったりします。映画が俳優をどう捉えているかということに集約されるのですが、このあたりがどの映画を観ても非常に興味深いです。
「欲望の翼」の俳優たちは、当時、香港のアイドルのトップスターたちですが、映画俳優として確実にハイレベルに成立しています。監督は彼らとどのようにかかわったのか。
かつて日本でも、相米慎二監督がアイドルたちを次々にスクリーン上で映画俳優にしていったことを思い出します。
ウォン・カーウァイと関わった俳優は、多くが一流の映画俳優になっています。中国には、かつての日本もそうでしたが、映画俳優という職業が、専門職として間違いなく現存しているという背景がありますが、ウォン・カーウァイの映画における俳優には、観客をスクリーンに引っ張り込む、気のようなものがあります。
もう一つの大きな特徴は、それはもう音楽の使い方のうまさです。これは、映画を観るたびに思いますが、ものすごく生理的に音が浸みこんできます。これはたぶん多くの人が感じてることだと思います。
既成曲の使い方も見事で、「恋する惑星」の ママス&パパス(夢のカリフォルニア)とか、「花様年華」の ナット・キング・コールの3曲(アケージョス・オホス・ベルデス)(テ・キエロ・ディヒステ)(キサス・キサス・キサス)、「2046」の ディーン・マーチン(スウェイ)や コニー・フランシス(シボネー)など、60年代の曲がここぞというタイミングでかかります。しびれる。
昔、影響を受けた映画は、今見直してもやっぱりすごかったですね。
また、新たな発見もありました。「花様年華」で、トニー・レオンとマギー・チャンが密会するホテルのルームナンバーが、2046号室になってて、次回作の「2046」にちなんでたりしてます。
やってくれはります。
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