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2016年4月28日 (木)

火がある、酒がある、膝が笑う。

ちょうど2年前に、ここに書いたと思うんですが、会社の新入社員研修キャンプというのに連れていかれて、かなりきつい登山をさせられて往生した話だったんですが、このキャンプ、4月のこの時期に毎年やっているのですね、我社。

去年も誘われまして、ちょうど別の用件と重なっていて、行かなかったんですが、正直に云えば一年前の辛い記憶もあって、出来たら行きたくないなというのが本音だったんです。だらしないといえばそうなんですけど、でも、どっかでさぼっちゃったなというまじめな気持ちもあってですね、で、今年もそのキャンプがやってきたわけですよ。今年は別件もなく、俺、山登りしんどいから行きたくないとは、ちょっと言えない空気もありまして。

だいたいこのキャンプを取り仕切ってるボーイスカウト出身のO桑君と、転覆隊出身のW辺君にとっては、スキップで登れるほどの山だし、この合宿には外すことのできぬメニューなわけです。

「どうだろうか、皆が山から下りてきたところで、温泉で合流というのは?」

などと申してみましたが、二人とも一笑に伏せるだけでした。ま、ありえないですね。

目指す日向山(ひなたやま)は、標高1650m、キャンプ地からは登りっぱなしの約3時間です。登山隊構成員は、新入社員6名に、有志社員7名、車輛部の若者1名、私とゲスト隊員として加わったコピーライターのH川女史、その隊列の前後をW辺キャプテンとO桑キャプテンが固めるという布陣です。

きつい坂を登っていくとですね、だんだんと前方に若者たちがかたまってきて、なにやら楽しそうな笑い声が途切れない状態なんですが、私とH川さんは少しずつ離されていくんですね。これをO桑キャプテンが、シープドックのように私達が群れからはぐれないように、見張りながら行くわけです。登り始めた時は、私もH川さんも無駄口叩いて冗談飛ばしたりしてたんですが、ものの30分くらいで全く無口な人と化しておりました。

「ひなたやま」なんて可愛らしい名前だし、このあたりでは小学生が遠足で登る初心者向け登山だと、キャプテンたちは云うですが、初心者だろがなんだろが、つらいもんはつらいですよね。当然ですが、2年前より2歳年とってるわけだし、おまけに2年前は途中まで車で上がったけど、今回は下からだし、この今回増えた行程が特にきつくてですね。膝が笑うと云いますが、よく云ったものだと思いましたね。その一週間前に、宮古島ゴルフ合宿というのに行って、3日で4ラウンドというバカなことしてきたせいもあるんですが、ほんとに膝が大笑いしておりました。いや、きつかった。

ただ、頂上をとらえた時の達成感というのが、登山というものの醍醐味なんでしょうね。この頂上からの景観がほんとに素晴らしいのですよ。全員で記念撮影しまして、そのまま私は地べたに突っ伏して倒れました。これも2年前と同じだったと思います。

しかし、若さというのは果てしないですね、突っ伏した私の横で、新入社員たちは何度も何度もジャンプしながら山バックの写真を撮り続けております。何なのだ、あのパワーは、と思いながら、考えてみますと、私より40才年下なんですから当たり前といえば当たり前ではあります。年齢差40って江戸時代なら孫ですよ。

このあと膝は笑いっぱなしで、私は風林火山の山本勘助のような歩き方で、山道を降ります。どうにかこうにか温泉に着いて、ふやけるほど湯につかり、疲れ切った身体にゴクゴクと生ビールを入れたあたりから、おじさんは徐々に蘇りますね。やがて、薪に火がつけられキャンプが始まりました。そおなんです、このカラカラ、クタクタ、スカスカの状態に、酒と肉を注入するのです。酒池肉林です。オリャーー。

私は、このためにやってきたのだぞ。そして、あのつらい山登りもそのためだったのだ。俄然、元気が出てきます。そのあたりは、山では無口だったH川女史も、私と同じ考えだったようです。すでに焚火を囲んで、持参した酒を皆にふるまってニコニコ元気におなりになってます。

私達がいつもキャンプしてるこの場所は、薪で焚火ができる今や数少ないキャンプ場でして、O桑君は薪で肉を焼かせると天才だし、私はこの焚火を見ながら呑んでいればいつまででもそうしていられるくらい焚火のことは好きなんですね。昔から、焚火見ているとなんか安らかな気持ちになるというか、落ち着くんですよね。原始人のDNAなんでしょうか。

そういうことで、30代とか40代の頃に、自分でキャンプできるような人になれるといいなと思って、いろいろ本買って勉強してわりと詳しくはなったんですけど、ようく考えてみると、あれだけのことを労苦をいとわず一人でやりきる勤勉さはないかなということに気付きまして、それからはキャンプも別荘ライフも、もっぱらどなたかのところに寄せていただくというパターンになっております。それなので、この場所でずっと焚火を見ていられるこのキャンプは大好きなのですが、あの日向山とセットというところが、やや躊躇するとこではあるんです。

毎回、究極に疲れきったところに酒が入ってきて、肉がジュージューいって、火に癒されるのが、決まり事ではあります。

この新人研修キャンプというのは誰が考えたか、よくできていて、2泊3日のキャンプを仕切るうえにおいて、人々の移動から考え、色んな道具をそろえ、食材を仕込み、酒を考え、薪も準備し、進行も考え、設営し、撤収し、自分達ですべて完成させるというのは、確かにいい勉強になるんだろうな、これからの仕事をやるうえで、と思いますね。

私が個人的に、この研修でいつも思いいたるのは、あの辛い辛い山登りの後、あの天国のような夜が来るという、人生、苦しいあとには、いいこともあるよという教訓のようなものなんですが。

でも、若者たちはあんまり登山はこたえてなかったから、しみじみそんなこと思ってるのは、私だけでしょうが。

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