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2014年7月 3日 (木)

カンヌ滞在記2014

このまえ、何年かぶりで、カンヌ広告祭に行ってきました。最近正式には、

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル

(Cannes Lions International Festival of Creativity)  云います。

長いですが、今、こういう呼び名であります。

もともと1954年に創設され、はじめは劇場用のCM映像が審査の対象でしたが、その後、世の中の進化とともに広告のジャンルも増え、今ではたくさんの部門に分かれて審査が行われています。それに加えて、多方面のセミナーが連日開かれ、まさにインターナショナル、世界中からたくさんの人たちが、コートダジュールの小さな街に集まってきます。このイベントの一か月前に、有名なカンヌ映画祭が同じ会場で開かれており、高級リゾート地であるこの街そのものは、こういった催し物には慣れてるんですね。

毎年6月の後半に一週間の日程で開かれまして、私たちの会社は、ここ10年くらい、その期間、会場の近くに毎年同じアパートを借りています。広告とか映像にかかわる仕事なので、会社から行ける人が行って、まあ勉強したり、情報収集するといいかなということなんですね。

毎年行ける人数もまちまちだし、その年その年によっていろんなパターンで、云ってみれば視察してきますが、基本的にホテルではなくてアパートなので、自分たちで自炊しながら合宿のように過ごしてきます。今年はわりと人数が多くて、男子社員3名、女子社員3名、社外からコピーライター女性1名、ディレクター男性1名、来年この業界に就職する予定の大学生1名、総勢9名。いつもの部屋では入りきらず、近くに小さいアパート借り足しました。

このベースキャンプにしてる場所が会場から近いこともあり、毎日いろんな人が集まって来てくれます。このあたりは、ロゼのワインが安くておいしく、すぐ近くに毎朝市場がたつので食材も新鮮で、肉屋も魚屋もチーズ屋もあり、O桑シェフの指示のもと、そこらへんで買ってきたものを皆で適当に料理して、けっこう幸せな食卓になります。私は、ワインの栓を抜くだけでなんにもしませんけど。

そんなことなので、否が応でも、毎晩たくさんお客さんが来て盛り上がってしまいます。この盛り上がるところがよくてですね、つまり、日頃はどっぷりと語り合えないことを、同じ業界の身近な人たちと、異国の最新の広告などを肴にしながら、ゆっくり語り合うことは、東京ではなかなかできないことなんですね。

世界中のトップレベルの広告表現を見てくるのと、最新の情報収集をしてくるということもそうなんですけど、実は、そこで毎夜おこなわれる酒盛りこそ重要な時間となってくるわけです。今年は、なんだかすごく良い時間が過ごせましたね。心穏やかな面白くてすぐれた人たちが、たくさん良い話をしに来てくれました。

この旅が実に楽しかったのは、今回の視察団(?)のメンバーの構成によるところも大きくて、特にゲストのコピーライターのH女史と、ディレクターのI氏との旅は楽しく新鮮でした。この方たちとは普段からよく仕事をさせていただいてるんですけど、今回私たちの会社のホームページを一緒に作って下さったことから、一緒にカンヌに行きましょうということになり、超忙しい売れっ子の二人が何とかスケジュールを空けて同行できることになったんです。Hさんは、優秀ですごく忙しい人のわりに、いつもゆっくりしゃべる人で、しみじみと癒される方です。

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Iディレクターは愉快な人です。一言でいうと、落ち着きのない小学生がそのまま大人になったような人で、いつも、東京から持ってきたスケボーに乗って、カンヌの街中を滑走していました。スタイルは、成田からずっと、いつも短パンにTシャツにビーサンです。一緒にどこかに出かける時も、すぐにスケボーでいなくなってしまい、しばらく歩いてると、どこからともなく帰ってきます。飼ってる犬と、リード無しで散歩してるみたいです。

一度みんなで電車に乗って、隣町のアンティーブのピカソ美術館に行きましたが、その近くの魚屋がやってる食堂でみんなでワインを飲みすぎて、酔った勢いでカンヌまでスケボーで帰ることをすすめたら、乗りのよいことにそのまま席を立って行ってしまいました。結局、道を間違えて約20キロの道のりを、左脚をつりながら完走して帰ってきて、その後、みなからスケボー大王と呼ばれ、カンヌスケボー伝説をつくりました。すでに関係者の間では語り草となっています。

まあ、そんな風にやけに楽しい日々なわけですが、そんな中で、きわめつけが、最終日の前日。私たち視察団は、幸運にも、お昼から日没まで豪華クルーザーに載せてもらえることになりました。大はしゃぎで出航し、ワインもバンバン開け、小島の入り江に停泊し、プロヴァンスのお金持ちの暮らしを少し知りました。Iディレクターはその間、街の帽子屋で見つけたキャプテン帽をかぶり、真っ白なシャツを買い、みなからキャプテン大王と呼ばれました。途中、3名ほど船酔いして脱落しましたが、最後は地中海に沈む夕日に無口で涙し、スペシャルな一日を終えました。

そんなこんなで最終日、明日は飛行機早いし、一週間けっこう忙しく楽しかったから、おじさん、疲れたし、荷物パッキングして、パジャマ着てベッドに入りました。みんなは別のアパートに帰ったり、街に遊びに行っちゃったり、早めに帰国したりで、その時間は、私一人だったのですね。

そしたら、夜中にブザーが鳴って、H女史が帰ってきたんですけど、それから次々に、ラストナイトゲストがやって来たんです。この方たちは、日本からフィルム部門の審査をするために来た方とか、日本の広告会社を紹介するセミナーをされてた方とか、私と違って、このカンヌでまじめに働いてらした方々だったんですね。全部で6~7人いらしたんですけど、みなさん疲れ果てて、真剣にお腹空いてるらしいんです。忙しい仕事を終えて、食べるものも食べずに、顔を見せに来て下さったわけです。

ほんとに嬉しかったんですが、さあ困った。さっきだいたいあとかたずけして、みんなどっか行っちゃったし、もうビールとワインしかない。

そうだ、そうめんと学生君が持ってきてくれた秋田稲庭うどんがある、ネギもある、めんつゆ少し残ってたよな。そうだ、O桑シェフが作ったカレーが残ってた。シェフは東京に帰っちゃったけど。そうめんとカレーうどん作りました。

いや、みなさん、ホントによく食べられ、ほぼ完食されて満足そうに帰って行かれました。よかったよかった。

ワインの栓しか抜かなかった私が、最後にちょっと働いたわけです。

それぐらいしないと、毎晩酒盛りしてクルーザーに乗って帰ってきただけということになりますし。

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