1958 長編アニメ映画「白蛇伝」
今年も、そろそろ来年の干支はなんだっけと思う時分になりまして、で、来年は巳年(へびどし)なのですね。
そんなことを考えてるうちに、「白蛇伝」というアニメ映画を思い出しました。
昭和33年の秋に公開されたようで、その時に観たことはよく覚えてるんですけど、どんな映画だったかは上手く説明できなくてですね、ところどころ印象には残ってるんですけど、私4歳児でしたもんで。
そこで、調べてみたんですが、1958年10月の公開、オールカラーの79分で、中国の民話の「白蛇伝」が題材になっています。
日本初の長編カラーアニメ映画、当然ながら、長編アニメ制作のシステムは確立されておらず、他国のアニメの研究から始まり、アニメーターの養成や撮影機材の開発にも着手し、2年がかりの仕事であったとあります。
ありがたいことに、今はこういう作品をネットとかで観ることができるので、あらためて鑑賞いたしましたが、なかなかによく出来ておりまして、この年、芸術祭参加作品で、海外で賞を獲ったりもしています。何より、今までに観たこともなかったアニメーションの魅力が満載で、その完成度も高くて、とても大きな反響があったんだろうなと思います。
そして、この作品の制作に携わったスタッフは、その後のアニメ界を牽引する役割を担っていったといわれています。公開時、高校3年生で受験生だった宮崎駿氏は、この映画に感動してアニメーションに関心を持つ大きなきっかけになったそうです。
そして、そこから長編のアニメ映画は定期的に制作されるようになりました。その映画が公開される度に映画館に駆けつける子供時代だったんですね、ぼくらは。
「白蛇伝」1958年に始まり、「少年猿飛佐助」1959年、「西遊記」1960年、「安寿と逗子王丸」1961年、「シンドバッドの冒険」1962年、「わんわん忠臣蔵」1963年、などなど、でも、どれも名作でした、よく覚えております。
我々の世代は、子供時代に漫画という文化が、勢いを持って広がり続けておりまして、その大きな流れを作ることになる、週刊少年漫画雑誌の「少年マガジン」「少年サンデー」は、1959年に創刊されて、子どもたちをすでに魅了しており、当時あまりに子供たちが漫画に夢中になるので、勉強もしないし本も読まないし、このままではろくな大人にならないと思われていたようで、大人たちはそれを禁止したりもしましたが、その流れはなかなか止まりませんでした。
やがて人気連載漫画は、テレビでアニメ化されるようになり、1963年、最初は「鉄腕アトム」でしたが、「鉄人28号」「エイトマン」「狼少年ケン」なども続きます。
考えてみれば、物心ついた時には、漫画雑誌とアニメ映画とテレビアニメは普通のことだったわけで、それ以外にも、王道としてのディズニーアニメもあったわけです。
個人的には、大人になって広告の映像を作る仕事をするようになってから、アニメーションという手法はずいぶんと使わせていただいているんですけど、今の最先端の技術は、コンピュータを含めてものすごいところまで進化しておりまして、これは本当に長い時間をかけて試行錯誤を重ねてたどり着いている技術ですけど、常に変化している領域でもあります。
そんなことで、アニメーションの世界は長く見てきたつもりですけど、1958年に初めてトライされた「白蛇伝」というアニメ映画は、たしかに昔の技術ではあるけれど、なんとも言えぬこの時にしか出せなかった手触りのようなものが感じられます。4才の時の記憶が妙に鮮明だったのはそのようなことがあったんでしょうか。
昔の映画や小説が今も色褪せない魅力があるのと同じことなんでしょうかね。
現代の子どもたちが、やはりアニメに夢中になっている風景を見るに付け、これはすでに我々の民族性と呼べるものなのかもしれんですな。