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2026年11月

2026年11月 6日 (金)

劣化の王国

このところ、自分の年令を考えれば当然なのだけれど、身体中のあらゆる筋力も脳も、劣化の一途でして、現象としては、膝痛めてから駅の階段は手すりの近くを歩くし、ゴルフのティーグランドはレディースからやらせていただきたいほどで、あと記憶力が惨憺たることになっており、危うい記憶でどなたかの名前を思い出さなきゃとなった時には、恐怖すら覚えることがあります。この話は、いずれだんだんに弱くなる身体の機能のことなので、今更あわてても仕方ないのですけど。
「劣化の王国」というタイトルは、だいぶ前に「落下の王国」という映画の名作があったもんで、ちょっと思いついた駄洒落です、すいません。
話は変わるんですが、この映画の監督は、ターセム・シンという人で、インド出身の映像クリエーターでして、私が初めてこの人の作品を見たのはCMだったんですけど、カンヌの国際広告映画祭でした。世界中の並いるCM映像の中でもセンシティブな非常に印象深い作品で、明らかに新しい才能が出てきた感触がありました。この時にこの人の名前はしっかりとインプットされ、たしか賞も受賞したと思います。
その後、彼はメキメキと頭角を現しまして、次々とCMやMVの話題作を手掛け、やがてハリウッド映画の世界へ進出するわけです。

Cannes_3


「落下の王国」は2006年の映画で、私がカンヌでターセムのことを知ったのは、1990年代の後半だったと思います。この広告祭には、この頃からたぶん8回くらい行きましたけど、世界中の広告作品を一度に見ることができて、ともかく注目度の高いイベントなんです。
広告祭は5月のカンヌ映画祭の後に続けてやっているので、この時期、南フランスのこの街は世界中の人たちがやってきて、やたらと盛り上がるお祭りの季節なのです。行けば面白いし刺激にもなるんですけど、日本からはちょっと遠いのが難点ではあります。
この前、コピーライターの長沢岳夫氏の作品集を読んでいて、まあ当然のように石岡瑛子さんの話が出る中で、あのターセムが彼女の広告作品を称賛していて、やがて一緒に映画を作ることになる話がありました。そう「落下の王国」の衣装デザインは石岡さんなのです。
なんだか数珠つながりのように、いろいろ思い出して話がとっ散らかってますが、脳が劣化しているもんですいません。
このターセムが称賛した広告には、PARCOのキャンペーンがあったと思うんですね。長沢さんの作品集を見ていると、石岡さんがアートディレクションをされているのは、1975年の「モデルだって顔だけじゃダメなんだ。PARCO」のあたりから3年間くらいと思いますが、どれも、すごい圧倒的な広告キャンペーンだったですね、思えば。

Parco_3


街でポスターを見ても、たまたまTVCMを見ても、ドカーンと迫ってくるんですよね。そもそもこれは広告なんだろうかみたいな、ともかくビジュアルもコピーも強くかっこええんです。
あの頃、渋谷の街は今とはずいぶん違っていました、都会といえば都会なんだけど、もうちょっと余白があって、公園通りという坂道をダラダラ登ってゆくと、坂の上にPARCOがドーンと立っていました。この風景の印象も、この広告の影響だと思いますけど。
私は1973年の春に田舎から出てきた少年でしたから、そういう東京ってすげえなあと思ってたわけで、そののち、たまたま、広告の業界の隅っこで働くようなことになるんですけど、いつかPARCOのCMをやりたいなと思っていたのですね。
まあ、ちょうど半世紀も前の話でして、記憶も多少劣化してますが。

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