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2014年5月

2014年5月14日 (水)

本の題名

このまえ「トイレの話をしよう」という本を読んだんですが、これが実にいろいろなことを考えさせられる本だったんです。副題に「世界65億人が抱える大問題」とあります。

少なくとも日本のそれも都市部に暮らしている私たちには、にわかにピンとこないことではありますが、世界中には、トイレとそれを処理する下水処理設備が備わっている地区は、ごく一部しかなく、トイレがあっても、きちんとした処理がされぬままに、下水が飲料水源に流れ込んでいる場所がたくさんあります。さらに、トイレという形すら持たぬ人々が地球上に26億人もいるそうです。そのような環境下で、糞便によって汚染された飲料水や食物によって引き起こされた下痢が原因で、途上国では、15秒に1人の子供が死亡しています。

衛生問題を語るとき、清潔な水の問題はよく語られますが、その根幹にある排泄物やトイレに関することは、あまり声高に語られることが少ないですね。でもこの本には、世界のトイレ事情がリポートされつくされていて、このことに関して、あまりにも知らなすぎたことを、思い知らされます。

下水設備の整ったこの国での暮らしが、いかに恵まれたものかを再確認し、世界にはトイレを持たず、夜中に人目を忍んで茂みに排泄に行く女性たちがいることや、排泄物を素手で処理する仕事に就かざるを得ない人がいることを知り、そうした人々にトイレを提供するために努力し、あるいは、不衛生な暮らしに慣れてしまった人々の衛生行動を変えるために、試行錯誤を繰り返している人々がいることも知りました。

この本をどういう人が書いているかというと、ローズ・ジョージという名前のロンドン在住のジャーナリストで、この人がまさに世界中のトイレというトイレを、さまざまな街の下水道の中を、そしてトイレのないスラム街等を取材しつくして本にしています。そして、驚いたことに女性なんですね、この人。しかも美人です。

この本のことを知ったのは、ある新聞の読書欄で、椎名誠さんがこの本のことを紹介されてたからなんですが、その中で、世界中のトイレを詳細にルポしたトイレ探索研究本の頂点にあるような一冊と評価されており、おまけに著者が女性で、しかも美人であることを付け加えておられました。そのことは余計なことですがともいわれてましたが。

まあ、その椎名さんの文章を読んですぐに購入したわけです。

椎名さんという方は、昔から本というものに対して、深い洞察と愛情にあふれていて、よく書評も拝読しておりました。この人が本を出され始めたのは、私が社会に出た頃で、次々に話題作になり、特に若者の人気を得ました。初期の作品はたいてい読んでますが、彼が自身の青春期を振り返った「哀愁の町に霧が降るのだ」や「新橋烏森口青春篇」は、自分がその頃新橋烏森口の小さな会社で働いていて臨場感があり、個人的には同じ時代を生きてるような親しみがありました。

その後この方は、本当にたくさんの本を書き続けておられ、小説、エッセイ、紀行、評論など多岐にわたり、240冊くらいの本を出しておられます。そのうちの何冊くらいを読んだかわかりませんが、ここしばらくはちょっとご無沙汰しておりました。

ついこの前、本屋を歩いていて、椎名さんの新しい本を見つけ、題名を見てすぐ買ってしまいました。題名は「殺したい蕎麦屋」。読んでみたくなる題名です。殺したい蕎麦屋のことが書いてあるのはほんの一部で、でもなるほどフムフムという感じで、ほかも変わらぬ椎名節で、なかなか良い本でした。

でも、昔から、題名のツカミが強いんですよね、椎名さん。

Siinasann

2014年5月 2日 (金)

私的・阪神ファンの歴史

今年は、プロ野球が開幕してから、珍しくタイガースが調子よくて、わりとここ数年にはなかったことなので、久しぶりに書いとかないと、また書く機会を失うかもしれないので、ちょっと書いときますね。

2005年にリーグ優勝して、日本シリーズでロッテにコテンパンにやられて、1勝もできずに4連敗してから、現在に至るまでずっと不調で、これは今に始まったことではなく、私が覚えてる限り優勝したのは、1985年と2003年と2005年と、まあめったに優勝なんかはしないチームなわけです。

では何でこのチームを応援しているかというと、いつも肝心なところでは勝てないんだけれど、その中に肩入れしたくなる、強いチームに(まあ巨人のことなんだけど)立ち向かっていくヒーロー的な選手が、必ず一人いたからなんですね、昔から。

具体的には、最も強かったころの常勝巨人打線からほとんど点を取られなかった、村山実投手、江夏豊投手。この人たちは、巨人に対して異常な闘争心をむき出しにして、剛速球で挑み続けました。有名な話ですが、かつて天覧試合で巨人の長嶋選手から撃たれたサヨナラホームランを、村山はあれはファールであったと最後まで言い張っており、その後、自身の記録である1500奪三振も2000奪三振も、長嶋選手から狙って奪っております。後輩の江夏投手には、

「長嶋は俺がやる、王はお前がやれ。」と、言い放っており、

江夏は日本新記録となるシーズン354奪三振を、狙い澄まして王選手から奪っております。多分、私の年代で阪神ファンを名乗っている人は、少年時代に、この村山か江夏に影響を受けた人です。

チームは優勝とかできないんだけど、この役者たちは試合の中で、必ず痺れる見せ場を作るわけです。云ってみれば、ちょうど幕末に散っていった新撰組の近藤勇と土方歳三のような存在とでもいうのでしょうか。

村山投手が引退をして、その後江夏は球団を追われます。このあたりがこの球団の球団たるところなんですが、ちょっと生意気で扱いにくくて多少ピークを過ぎたと思われる選手は、すぐトレードに出しちゃうんですね。私は江夏の大ファンでしたから、数日間呆然としていました。阪神ファンを辞めようかとも思いましたが、江夏とバッテリーを組んでいた田淵幸一捕手は、見事な滞空時間の長いホームランを打つ選手で、ホームランアーチストと呼ばれ、1975年には、王選手の14年連続本塁打王を阻止し、名実ともにミスタータイガースとなって孤軍奮闘しておりましたので、思いとどまります。

ただ、それも長くは続かず、1978年のオフの深夜、突然トレードに出されます。

1969年からの数年間、江夏・田淵の黄金バッテリーでのセ・リーグ制覇を思い描いたファンの夢は、早くも終わりを告げました。結果的にはその後、二人ともリリーフエースとしてまた4番バッターとして移籍先の球団を優勝に導きます。全く、阪神の球団フロントは何をやっとるんじゃと、いまだに憤ってるわけです、個人的には。

ファンにとっては、ヒーローをすべて失ってしまったかに思われましたが、そのころ、1974年にあまり期待もされずドラフト6位で入団したあの掛布雅之が確実にポジションをつかみ始めます。江夏と田淵を順番に失っていく中で、この高卒ルーキーは成長を続け、本人いわく身長まで伸びるのですが、3年目には、27ホーマーを放ちます。阪神ファンたちの愛情は、すべてこのカケフ君に向かいます。

今もそういうところあるかと思うんですが、あの頃の阪神ファンというのは、ちょっとどうかしてたんですね。

1973年のペナントレース10/22最終戦に、巨人と阪神が優勝をかけて戦った歴史的な試合があったんですが、9-0で阪神は完敗します。その時、甲子園の阪神ファンたちは、なだれを打ってグランドに駆け下り、逃げる巨人の選手につかみかかります。胴上げどころじゃありません。さすがに後味悪かったですね。

まあ一事が万事そういうところがあって、情が深すぎるというか無茶苦茶なとこがあります。友人のK野さんという人は、高校卒業まで甲子園のすぐそばで育って、今ヤクルトファンなんですけど、何で阪神ファンにならなかったかと云うと、阪神ファンを見て育ったからだと言いました。

ヒーローが誰もいなくなったタイガースで、掛布はものすごく愛されたんですけど、不調になるとものすごいブーイングも浴びます。なんか気質として愛憎が激しいんですね。

そういう阪神ファンとは少し距離を置いてるつもりなんですけど、やはり阪神ファンなので、そういうとこありますね、ちょっと。最近掛布さんが本を出していて、当時を振り返ってますけど、好調時は天国、不調時は地獄だったと言ってます。でもあのファンの歪んだ偏愛が、あれだけのホームランを打たせたかもしれぬと言ってます。複雑です。

そして、江夏がいても田淵がいてもまったく達成することのなかった優勝のチャンスが訪れます。

ちょうど、江夏と田淵が球界を去った1985年。4番打者は掛布(30歳)です。そして田淵との交換トレードでやってきた真弓明信(32歳)、1980年にドラフト1位で早稲田から入った岡田彰布(28歳)、そして海の向こうからタイガースを優勝させるためにやってきたランディ・バース(31歳)。この年、この私と同年代の選手たちが200発ものホームランを放ち、1964年以来のリーグ優勝、その勢いで、常勝広岡西武ライオンズを日本シリーズで破り、日本一を達成するのであります。

ただ、強かったのはこの年だけでした。そのあとまた2003年まで18年間優勝から遠ざかります。ま、強いんだか弱いんだか判らんチームなんです。たぶん弱いんですけど。

まあ、そういうチームなんで、自然とチームというより4番打者とか、エースの活躍に関心がいってしまうところがありまして、そういう選手がいない時は、ひたすらよい新人が育つのを待っているわけです。それなので、ファンは昔から二軍の選手のことをよく知っているし、毎年ストーブリーグ(ドラフトやトレードの話題)は大変盛り上がります。

そうこうするうちに、プロ野球界では、FA制度が始まり、4番打者やエースに他球団から来ていただくということが始まります。阪神も広島から金本さんに来て頂いて、優勝できました。思えば、この制度がなかったら1985年からいまだに優勝してなかったりするわけですから、これはこれでありがたいことなんですが。

ただ、掛布さんも書いていますが、やはり、そのチームの4番打者とエースは、そのチームが育てるのが理想だし、だからこそ盛り上がるんじゃないかということも、たしかに言えると思います。

まあ、昔からの阪神ファンとしてはですね。あの江夏や掛布のように、逆境を跳ね返して、胸のすくような勝ちゲームを見せてくれる、筋金入りのスラッガーやエースを待っているわけです。

そう考えるとですよ。今、やっぱ期待するのは、藤浪晋太郎君なわけです。たまたま今打線が調子よくて、マートンもゴメスも鳥谷までもよく打ちますけど、これ常識ですけど、打線は水物なんです。行き先を見失ったチームを救えるのは,やはりエースなんですね。あの村山や江夏のように。

藤浪君は、若いのにしゃべることもちゃんとしていて、賢くて大人だと思いますが、まわりを気にせずに、あの切れの良いストレートを磨いて、圧倒的なエースを目指してほしいです。そして、あの巨人打線からビシバシ三振を奪ってほしい。

思えばこれまで、いろんなことがあったわけですが、ファンとしては、ここんとこ、またちょっと盛り上がっております。

Fujinami2

 



 

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